貧困の終焉

みなさん

この本をご存知だろうか??

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ジェフリーサックスという世界的な開発経済学者が書いた2025年までに世界の絶対貧困を撲滅するという本だ。

*絶対貧困とは1日1ドル以下の収入で暮らしている人たち。現在は9億人ほどいる。1日2ドル以下にすると世界の総人口の半数ほどが含まれる。

そのような状況をいかにして解決するかというのを自身の経験を元に論じている本である。ジェフリーサックスは、28歳にしてハーバードで終身教授の座を獲得した超エリートであるが、その考え方はすごく実践的で、NOはいずれYESに変わるなど物事を動かすエネルギーに溢れている。

 

この人物は、国連ミレニアム計画という2015年間でに絶対的に貧困を半減するというプロジェクトの特別顧問として、国連やその諸機関にアドバイスをする立場として活躍している。国連事務総長を除いての実質のナンバー2である。実際のこのミレニアム計画がどのような結末になったかというと、概ね大成功だと私は考える。世界の絶対貧困は26%から13%になり、飢えと欠乏で苦しんでいる人の数も半数になった。この背景には、多くの貧困を抱えていた、中国とインドの急成長も関わっているだろうが、そのためにも国連として全世界を巻き込んだビジョンを掲げたことが、大きな要因だったと私は考えています。

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ミレニアム開発目標報告2015 | 国連WFP

そして現在は、その計画は、『持続可能な開発目標』に引き継がれた。これは2030年までに人間と地球の持続的な繁栄のために、17の目標を達成するというものです。

ミレニアム計画が8つの目標から成り立っていたのに比べて、その数は2倍に成っています。2000年からスタートして2015年にいったんの区切りとして終わったミレニアム計画の成功を踏襲する形で、組織や方法、協力関係を維持するとすれば、ミレニアム計画よりは進みやすいのかなと思いつつ、現状の社会の個人主義への流れとテクノロジーのスピードをうまく反映できるかが鍵かなと思ってます。

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www.unic.or.jp

 

そんなこんなで、世界全体としては、貧困の解決とより良い国際関係性づくりに動いている。課題は多く、あきらめの声もその分多いだろうが、希望を持って一つ一つ向き合っていけば、いずれは、僕の生きている時代に終わるかはわからないが解決されていくのかなと思っている。

 

では、本題である。

そのようなことを書かれている『貧困の終焉』という本を読んだ。最近、教授に自分の考えていることを相手にも映像が伝わるように話せと言われたので、一旦のアウトプットをこちらに書こうと思う。

 

僕は何をこの本から学んだのか??

1臨床経済学という知見

2国家の経済を立て直すために具体的な手法

3先進国と途上国の関係性

4ミレニアム開発計画

5グローバル協定の必要性

僕にできることは何か

 

まずは、ジェフリーサックスの国家を分析する手法を紹介しよう。

 

1臨床経済学という知見

 

通常、臨床という言葉は医療の世界で活用される。ジェフリーサックスがこの領域に落ち着いたのも、彼の奥さんが医師であったということが大きい。具体的には、国家を一般化してその解決策に普遍的な方法を当てはめるのではなく、実際に現場で何が起きているのか、その問題は何かというのを個別に分析していかなければ形だけの実相とかけ離れた処方箋を出してしまうということだ。

彼は、幾つかの分析観点を出した。

1貧困の罠 2経済政策の枠組み 3財政の枠組みと財政の罠 4物理的な地理的条件

5政治の形態と失策 6文化的障壁 7地政学 

これらの観点から、国家を分析した。今回は詳細を述べるまではしないが、国とひとくくりに考えて、そこで起こっていることが幾つかの国で同じだとしても、その複雑性は国家によって違うので、その点を見落としてはいけないし、ただ処方箋を出すだけではなく、根源的な環境を変えることまでしなければならない。ということだ。

 

僕は、万物に当てはまる解決策や方程式を見つけようとしていたし、学問の目的は無駄な要素を削り取りある一定の状況では作用する方程式を見つけ、それを応用していくものだと思っていた。しかし、本当に国を救う、そしてその結果貧困を解決しようと思ったら、一筋縄ではいかないなと改めて感じた。

 

2国家の経済を立て直すために具体的な手法

彼は、実際に、ボリビアポーランド、ロシア、インド、アフリカに経済顧問として関わる中で、国家の再建に協力してきた。幾つかの国はうまくいかなかったが、概ねその役割は全うしたと思う。

 

その中での、具体的な手法として、ボリビアでは、ハイパーインフレを解決することで市場に商品が戻ってくるようにした。インフレが起こって現地の通貨の信用が落ちている状態では、商品はブラックマーケットに流れ、外貨で取引される。そして値段も法外なので、市場には商品が出回らない。それを、石油の価格を引き上げることで、ボリビアの財政をより強固にし、また緊急社会基金という基金を作り10億ドルを先進国から集め、ボリビア通貨の信用を高めた。その結果、現地通貨の信用は安定し、正当なレートで市場から買い物をすることができた。

 

他には、ポーランドをEUに復帰する手助けをした。この時、ポーランド共産主義の国で、ソビエトとの関係性の中でアップアップしていた。その時の解決策は、市場経済を組み込み、価格統制を解除し、その傍らで第二次世界大戦の債務を帳消しにしてもらうように、先進国に頼み込むというものだった。結果的に、債務は払わなくて良くなったし、EUにも復帰できた。上記の二つの国は、どちらかというと、経済学者として理論を駆使し、またことば巧みに協力を促す中で達成できたことだと思う。

 

その他に、ロシアに市場経済を組み込む手伝いをしたが、最終的に、アメリカからの援助やソビエト崩壊によってかなわなかった。ジェフリーサックスは最終的に、経済顧問の立ち位置から引くことになった。この本は2004年の本であるが、現在はロシアは少しずつであるが、経済成長を果たしている。

 

インドは、IT革命の波に乗って経済成長を遂げた。インド工科大学への投資が帰ってきたのだ。2000年までインドは、見捨てられた土地だった。カースト制度や、宗教的な価値観の違い、地理的条件、イギリス支配化時代の傷跡、農村地帯の多さ。など多くの課題を抱えていた。それらは、何度かの改革によって成し遂げられた。一つ目は、農業改革である。その土地にあった生産性の高い穀物を育てることによって、農業従事者の収入は上がった。その次にIT改革である。インドには、世界の投資と、仕事がインターネットを介して集まってきている。これらは、インドの今までの見られ方からすると予期せぬことであった。2015年時点で、インドのGDPは世界7位であり、日本との差は2倍にまで狭まってきた。世界は刻々と成長している。

 

アフリカの現状は、ひどく2016年現在でも世界の発展から取り残されている。これらには幾つかの理由があるが、他の国に比べて大きな問題となっているのは、エイズマラリアなどの病気である。これによって、前途ある優秀な人物も、子供を育てるべき父母も無くなってしまっている。毎日1万人が病気によって亡くなっている。幾つかの原因があるが、アフリカのマラリアは、他の地域のマラリアよりも感染力が高い。またエイズに関しては、いろいろな理由があるので、特定はできていないが、どちらかというと病気になった後の治療に問題がある。アフリカでは、エイズマラリアで苦しんでいる人たちに十分な医療を提供できる仕組みがないのだ。お金もなく、薬もない場合はただただ死を待つしかない。また病気によって収入も減り、そしてひいては国家の財政を圧迫する。これがアフリカが現在も発展から乗り遅れている理由の一つである。

これらの課題を解決するために、ジェフリーサックスは、『世界エイズ結核マラリア対策基金』を設立した。また『マクロ経済と健康に関する委員会』を指揮し、現状の課題は何かということを研究者から実践家まで集め、大規模なプロジェクトの中で合意を取って、報告書を発表した。これらは、多くの利害関係者の合意が含まれていたので、注目され実際のプロジェクトも動いていった。

 

このように、ジェフリーサックスは、超抽象と超具体を行き来しながら、鮮やかに課題を解決していく。僕はその姿勢に憧れを覚えたし、自分もその分野で挑戦してみたいと思った。

 

3先進国と途上国の関係性

今までは、課題は途上国にあると考えていたが、その認識をこの本を通じて改めた。先進国などの資金や技術の提供側にも問題があるのだとわかった。まずは、貧困の解決のために必要な資金を援助しきれていないのである。それだと、延命処置をしただけになってしまし、根本的な解決のためのエネルギーが足りていない。そして、経済が経ちなってきたと思ったら、貸付金の返済を求める姿勢も問題である。そこをより長期的に見て、むしろ返済を帳消しにすることによる、その国の発展と関係性構築に目を向けていくべきである。僕ら先進国側が求めれている資金は、GNPの0.7%ほどである。その金額があまり高いようには私は思わないが、より一層の理解に努めたい。

 

4ミレニアム開発計画

これは、2015年までに貧困の解決に向けて国連加盟国で合意がなされた開発計画であるが、8つの目標を上げている。

1極度の貧困と飢餓の撲滅 2普遍的初等教育の達成 3ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上 4幼児死亡率の削減 5妊産婦の健康と改善 6HIV/エイズマラリア、その他の疫病の蔓延防止 7環境の持続可能性の確保 8開発のためのグローバルパートナーシップの推進

の八つである。幾つかの目標は達成され幾つかは達成されなかったが、全世界で一つのコンセンサスを取り、協力して向かっていったということは大きな前進だったと考える。

 

5グローバル協定の必要性

この本のない世は2004年のものなので、今とはだいぶ状況が違うだろうが、グローバルな関係性構築は一層大事な部分であろう。国家企業という存在や個人の力が強くなってきているが、それに伴って、全体としての意思決定の大切さも高まってくると思う。僕は、国際協力について学ぶまでは、世界がどうなっているかあんまりわからなかった。そして、より前進している感覚も薄かったが、このような素晴らしい人たちが、ゆっくりとではあるが、着実に物事を前に進めているのを知ると人間の可能性とあったかい世界に希望が湧いてくる。トランプ大統領と、ドゥテルテ大統領の誕生は、どのような結果を引き起こすのか現在は想像できないが、ただより前に社会を前に進めていこうという人たちの手によって物事は前に進んでいくのだろうと思う。そのためには、個人から攻めるか、集団から攻めるか、国家から攻めるか、個人的な結論は、全体t系に物事を前に進めていく必要があると思う。

 

僕にできることは何か

これは、自分のこの分野でのポジショニングを決めることである。僕は、今のスローガンとして『研究者兼実践家』を目指している。つまり、物ごとを多角的に見て、これらのシステムをできる限り分析した上で、具体的なアクションに落とし込み実行していくというものだ。やっていきたい分野として、各関係者を結びつけ結核したプランを実行に移すという役割をやっていきたい。僕は、必ずしも現場で関わりたいというわけではなく、プランが実行に移りその結果喜ぶ人がいるならそれでいいと思う。関わりかとしては、中間援助の役割をやっていきたい。資金と人とプランを提供する側に回りたいし、その時に関係性構築に自分のファシリテーションスキルや人間性を生かすことができたら、この上なく幸せである。そのために今は、国際協力に関する情報を集め、思想に昇華し、それを人の目に映る形として論文に落とし込むということをこの3年間でやっていく。軸としては、『途上国側と先進国側』の二つに絞っていく。援助される側の研究と、ドナー側の研究であり、そこで生まれるプロジェクトマネジメントや、人的資源管理を深めていきたい。

 

まとめ

これらのことをこの本を通じて僕は感じた。

国際協力に関する希望的な側面を見出すことができたのが、この本を読んでの一番の気づきであったと思う。問題が困難でも真摯に向き合えば壁は解決できる。

 

僕は、これからも真摯に『至誠』を持って解決していこうと思う。

 

まこる